胎児は「人」じゃない?胎児傷害をめぐる問題について

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 被告人が出した工場排水の中に有毒なメチル水銀が含まれていた。この有毒なメチル水銀に汚染された魚を食べたことが原因となり,妊娠中だった女性の胎児が健全な生育を遂げないまま出生し,その後死亡するまでに至った。

 裁判所は,一審において,実行行為の際に実際に「人」が存在する必要がある訳ではなく,結果発生時に「人」が存在していることが必要であるとして,業務上過失致死罪が成立するとした。また,二審においては,胎児が出生する時点まで包括的・継続的に侵害行為が及んでいるものとして,「人」に対する過失傷害行為が認められ,業務上過失致死罪が成立するとした。これを踏まえて,最高裁は,「胎児に病変を発生させることは,人である母体の一部に対するものとして,人に病変を発生させることにほかならない。」とした。そして,「結局,人に病変を発生させて人に死の結果をもたらした。」とし,業務上過失致死罪の成立を認めた。

 法律上,胎児は「人」とは別の存在として扱われており,胎児に対する傷害罪は存在しないため,問題となった事例です。そこでの裁判所の判断は結論として業務上過失致死罪が成立することになっていますが,一審,二審,最高裁といずれもその理由は微妙に違うようにも思えます。みなさんはどの理由が一番説得力のある理由だと思いますか?

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