様々な種類の「暴行」について

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 被告人は,お酒を飲み,酩酊状態でいたところ,内妻Aに対して当り散らし始めた。被告人は,Aが家を出ていく際にそれを止めようと,近くにあった日本刀を振り回し威嚇していた際に,その刃先がAの腹部に突き刺さってしまった。その結果,Aは失血多量によって死亡するに至った。

 裁判所は,狭い4畳半の室内で日本刀を振り回す行為そのものが暴行行為に当たるとした。そして,被告人は,日本刀を振り回すことについての認識はあったことから,暴行の故意は認められる。そして,それによって死亡の結果を生じさせていることから,傷害致死罪が成立する。

 法律上,暴行とは,複数の使われ方をします。人のみならず,物に対する有形力の行使(最広義),人に向けられた物理力の行使(広義),人に対する物理力の行使(狭義),人の意思ないし反抗抑圧の要素を含んだ人に対する物理力の行使(最狭義)とされています。本件の事例では広義の暴行についてです。「人に向けられているか」については評価の問題となります。凶器の使用の有無や凶器の種類,被害者との距離,行為の強さ等の客観的事情や被告人の主観的事情を考慮して決まることになります。本件では,日本刀という凶器に殺傷性があり,強度であることに加えて,四畳半という狭い室内であったという事情が大きいでしょう。

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